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文系自治体職員でもできる!持続可能な地域のつくり方講座 公共施設エネルギー性能の効果は光熱費の削減だけでない(5)

第五の効果は、地域住民への高断熱・高気密建物のショーケースとなることです。高断熱・高気密の建物の欠点は、それを体感したことのない人にとって、完全に未知の世界です。そのため、普段から低断熱・低気密の住宅や建物で、当たり前かつ無意識的に暑さ寒さに我慢している人は、自らの所有する建物を高断熱・高気密に改築・改修するモチベーションにしばしば欠けます。光熱費の削減効果だけでは、投資回収の年数が長くなり、投資意欲が湧きにくいのです。

そのため、自治体としては様々な方法で高断熱・高気密建物のメリットを住民に知らせる必要があり、その有力な方法の一つが公共施設の高断熱・高気密化です。公共施設には、自治体職員だけでなく、多くの住民が出入りします。その機会に、居心地の良さを体感するとともに、ロビーなどでの説明展示を見て、理解を深めることになります。

実際、EUでは、公共施設を高断熱・高気密建物のショーケースとして位置づけています。建物のエネルギー性能に関する2010年5月19日のEU指令(前文24)は「環境とエネルギーが公共施設で考慮されつつあること、したがって公共施設が定期的にエネルギー認証の対象とされていることを周知する事例と、公共施設がなるべきである」と述べています。そして、2019年1月1日以降に新築される域内の公共施設について、ニアリーゼロエネルギー性能(躯体と設備の性能だけでできる限りゼロエネルギー消費に近づける性能)を達成することを求めています。

日本でも、環境省が高断熱・高気密の住宅に宿泊体験する事業を行っていました。やはり、温熱環境を体験することが効果的な啓発方法だからです。ただ、どうしてもこの方法では効果を実感できる人が限られてしまいます。そこで、誰にとってももっとも身近な建物で、誰でも訪れることのできる自治体の公共施設を、高断熱・高気密建物のショーケースとすることが重要になります。

公共施設を高断熱・高気密建物のショーケースとする際には、構想段階からそのことを住民に共有しておくと効果的です。第一の理由は時間です。どうしても公共施設は、構想から実際の供用まで数年の時間がかかります。ですので、供用開始から啓発を始めるよりも、構想段階から啓発を始めておけば、住民所有の建物にその考え方を取り入れる可能性が高まります。第二の理由はメリットとデメリットを共有しやすいことです。どうしても高断熱・高気密建物はイニシャルコストが増加しますが、構想や建設の途中経過を共有することで、なぜイニシャルコストが増加するのか、目に見えて明らかにできるからです。

そして、公共施設で働く自治体職員への啓発効果が、もっとも期待できます。職員は、地域住民でもあります。職員たちの住宅を高断熱化する早道でもあるのです。

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