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文系自治体職員でもできる!持続可能な地域のつくり方講座 公共施設エネルギー性能の効果は光熱費の削減だけでない(4)

第四の効果は、地域の建築事業者の技術力向上です。建物の躯体性能を向上させることは、作業工程が増え、施工に注意が必要となるため、建築事業者の手間賃を増加させることになります。とりわけ、中小規模建物や住宅、既存建物の躯体性能の向上は、大資本のゼネコンからすれば、営業コストばかりかかってしまうため、地域の中小建設会社や工務店が市場の主力になります。よって、公共施設に限らず、エネルギー性能の高い建物を普及しようとすれば、こうした事業者の技術力を高めることが重要になります。

地域の建築事業者の抱える課題は、技術力を高めにくい環境にあることです。大資本のゼネコンと異なり、社員の技術力を高める開発や教育への投資は小規模になりがちです。それをサポートするシステムは市場にありますが、玉石混交なのが現実で、建築物理学の観点からすると間違った独自工法を普及するサポートやフランチャイズもあります。また、高性能の建物を手がける経験も少なく、従来型の建物だけを建てているため、高い技術を実地で身につける機会も少ないのです。

そこで、公共施設の新築・改修の機会を活用し、地域の建築事業者の技術力を高めることが必要になります。公共施設そのものは、高いエネルギー性能を要求すれば、技術力のある域外の事業者が受注するかも知れません。けれども、自治体と地域の建築事業者等で予め協議会を構成し、発注に際して協議会による現場研修を条件としておけば、その技術を地域の事業者が実地で学べます。並行して、専門家を招いての座学研修、海外の専門機関でのトレーニング、会員の現場における実装など、協議会で勉強を重ねれば、より効果的でしょう。

地域の建築事業者は、新たな付加価値を提供できるようになるため、地域産業の振興という意味も持ちます。産業振興の観点で、技術研修に補助金を支出することも考えられます。従来の補助金は、建物や設備に支出されていましたが、そうでなく、地域の人材育成に支出するのです。それは、大手資本と異なって人材育成が後回しになりがちな地域の中小企業に、人材や技術力の下駄をはかせ、対抗できるようにすることを意味します。技術力と収益力が高くなれば、その補助金はやがて不要になります。

また、公共施設を通じた技術力の向上は、地域の建築事業者の持続性を高め、地域の持続性を高めることにもつながります。建築事業者の存在が、地域の文化や定着のインセンティブ、災害への対応力と関係してくるからです。建築事業者やその従業員は、しばしば地域の祭りや伝統文化の担い手になっています。下請け的な仕事から、付加価値の高い仕事への転換は、仕事の面白さややりがい、社会的な意義に直結し、そこで暮らしていくことへの意欲と関係してきます。災害が発生したときには、救助・復旧・復興の全プロセスで、地域の建築事業者の存在が必要になります。

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