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文系自治体職員でもできる!持続可能な地域のつくり方講座 公共施設エネルギー性能の効果は光熱費の削減だけでない(1)

公共施設のエネルギー性能を高める効果は、光熱費の削減だけにとどまらず、多岐にわたります。日本では、暑さ寒さに耐えて光熱費をケチる傾向があり、光熱費の使用実績から削減見込額を出すと、エネルギー性能の高い建物はペイしないと評価されることもあります。すると、エネルギー性能の低い建物の方が選ばれてしまうことになります。そこで、効果を複合的に考察する必要があります。

第一の効果は、施設を利用する人々の知的生産性(学習効率を含む)の向上です。公共施設の中には、役所庁舎のようにオフィスとして使う施設や、小中高校のように教育の場として使う施設があります。こうした公共施設の目的の達成を促進することに役立つのです。

知的生産性に影響を及ぼす4つの環境のうち、一つが物理的環境とされています。物理的環境とは、温熱環境や空気質、光環境、空間の質のことです。適度な室温、適度な換気(二酸化炭素濃度の低さ)、適度な明るさ、適度な広さが、知的生産性に影響を及ぼすのです。なお、その他3つの環境とは、人間的環境(対人関係)、社会的環境(社会的地位、仕事内容)、個人的環境(モチベーション、体調、仕事のやりがい)です。

適切な方法によるエネルギー性能の向上は、物理的環境を改善するとともに、その維持コストを減らします。断熱・気密が年間の室温・湿度を安定させ、熱交換換気が二酸化炭素濃度の上昇を抑制し、照度を丁寧に管理し、冷暖房(採暖)のための狭い間仕切りを不要にするためです。

知的生産性と物理的環境の関係は、近年の研究によって明らかになってきています。村上周三他『教室の環境と学習効率』がその代表的な研究です。本書には、室温25℃をピークに、低温側、高温側の両者で学習効率が低下する実験結果が示されています。また、換気量も学習効率に影響すると示されています。

物理的環境は、法律によって一定の範囲とすることが決められています。建築物衛生法に基づく建築物環境衛生管理基準によると、温度「17℃以上28℃以下」相対湿度「40%以上70%以下」二酸化炭素濃度「1000 ppm以下」などと定められています。対象となるのは、延床面積3,000㎡以上の建物と延床面積8,000㎡以上の学校施設です。

公共施設を新築する際のポイントは、基本設計の仕様書で、建築物環境衛生管理基準より厳しい室内環境や対象施設を指定しておくことです。例えば、温度「21℃以上26℃以下」などと指定するのです。具体的な基準等については、基準を厳しくする、範囲を広げると方向性を決めた上で、担当職員と専門家で検討すればいいでしょう。特に、学校を新築する場合、教育委員会に任せがちのため、首長部局の事務職員が配慮する必要があります。

【図表】村上周三、伊藤一秀、ポール・ワルゴッキ『教室の環境と学習効率』(建築資料研究社)

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