文系自治体職員でもできる!持続可能な地域のつくり方講座 公共施設から始める(1)
持続可能な地域をつくることの重要性は、多くの自治体職員に理解されているでしょう。ただ、日常業務に追われてそのことをアタマの片隅にしまっていたり、理不尽な指示に慣らされて正反対のことをしていても気づかぬふりをしていたり、何となく理解していても具体的に何をすべきか分からなかったりしているだけではないでしょうか。
持続可能な地域とは「住民がいつまでも安心して暮らしていける地域」のことです。「いつまでも」とは、現在の世代だけでなく、将来の世代を含みます。「安心して」とは、今日の暮らしだけでなく、中長期的な暮らしにも見通しが立つことを意味します。「暮らしていける」とは、意に反して地域を離れずに済むということです。
そのためには、住民に対して多様なサービスが提供され続けなければなりません。典型的なものは、上下水道やエネルギー、交通などのインフラサービスです。警察、消防、学校、病院などの公共サービスもあります。銀行や運送、商店などの民間サービスも必要です。図書館や公園、カフェなどの憩いの場も重要なサービスです。また、清浄な空気や美しい景観、豊かな生態系などの自然環境も、生きていく上で必要なサービスといえるでしょう。
それら住民に提供されている多様なサービスを保持し、より良いものにしていくのが、自治体の根源的な役割です。これは、地方自治法の「民主的にして能率的な行政の確保を図るとともに、地方公共団体の健全な発達を保障することを目的」とすることと同じです。同法の「地方公共団体」とは自治体と同義で、自治体行政だけでなく、その構成員たる住民を含めています。
自治体職員(正確に言えば自治体行政の職員)の「職業的良心」は、この根源的な役割に立脚します。職務に関係するあらゆる言動のベースとなるべきものです。ということは、首長や議員、上司に首肯する「イエスマンシップ」や、職務の意義を考えずに粛々と仕事する「お役所仕事」は、自治体職員の「職業的良心」に反することになります。
住民の暮らしを支える多様なサービスを保持・発展させる際に困難なことは、いずれのサービスも有限であることです。自治体財政や職員には限りがある一方、税や公共料金を際限なく値上げすることもできません。民間企業の提供するサービスは、人口減少で収益性が悪化すれば撤退するでしょう。自治体や企業のサービスを充実させても、開発行為によって自然環境や景観という別のサービスが損なわれることもあります。
本講座では、どのようにすれば持続可能な地域をつくれるのか、現状から出発して具体的に説明していきます。それも、これといった専門知識のない文系事務職員でも可能な方法で、すなわち自治体内部で提案・合意形成できるように説明していきます。