インフラ整備の経緯と現状を踏まえた取捨選択
人口減少においても、住民生活と地域経済の基盤となるインフラを安価なコストで維持するためには、時間をかけて取捨選択する必要があります。稼働率・効果の低いインフラを廃止し、稼働率・効果の高いインフラに投資を集中していくのです。
一方で、現在の稼働率・効果だけで選択と集中を行うと、一部の人々にしわ寄せがされるだけでなく、必ずしも全体としての稼働率・効果が高まるわけではありません。なぜならば、既に中心部が空洞化したドーナツ状に拡大した都市域で、ドーナツ部分に投資を集中しても、非効率的な都市構造が存続するだけです。
重要なことは、地域の課題や不安を解消する方向で、徐々にインフラを取捨選択していくことです。既存の問題を固定化させては、取捨選択の意味がありません。
ポイントの第一は、インフラ整備の経緯を踏まえ、取捨選択するインフラを決めることです。例えば、都市域が拡大してきた背景には、防災施設(ダム・堤防・砂防ダム等)や田畑の埋め立て・盛り土によって施設建設できるエリアが広がったことがあります。インフラ整備がなければ、災害に脆弱なエリアのままでした。こうしたエリアは、インフラが想定している範囲の災害であれば問題ありませんが、それを超えると一転して危険なエリアになります。よって、人口増加期にインフラ整備によって居住・企業立地ができるようになったエリアから、古くから居住・企業立地していたエリアへ、徐々に移転することで、災害リスクを低下させると同時に、インフラの取捨選択をすることができます。
ポイントの第二は、現状の都市・地域構造の課題を踏まえ、取捨選択するインフラを決めることです。例えば、自動車社会を前提として、利便性の悪い場所で造成された宅地エリアは、居住者の高齢化とともに、住宅が老朽化し、空き家が増え、居住者自身の生活も不便になっていきます。こうしたエリアでは、既存の居住者の生活を支えつつ、利便性の高いエリアへの移転を誘導することで、エリアを自然に戻していくことが考えられます。
これらの取組は、強制移住を伴うものでなく、ライフステージの区切りと当事者の自発的な意思に基づいて行うことが大切です。ライフステージの区切りとは、例えばそのエリアに住む居住者が亡くなった場合、相続者がそこに移り住むのでなく、行政によって土地を買い取るというように、人生の節目で適切な選択をしてもらうことです。当事者の自発的な意思とは、移住の壁を行政が取り払い、移住したくても移住できない人の移住を促進することです。
こうした取組を始めているのが、富山市です。富山市では「串とお団子」型の集住を段階的に進めています。串に見立てた公共交通と、お団子に見立てた駅・停留所周辺にインフラ投資を集中し、住民の利便性を高めつつ、維持管理コストの抑制を目指しています。
【図表】富山市の都市構造の考え方(環境未来都市ホームページ)