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住宅の断熱投資を増やして医療費を削減する

負の効用に由来する経済活動を正の効用に由来するものに転換することでは、断熱住宅の普及による循環器系疾患の抑制が有効です。ブログ「医療費・介護費を減らすと同時に地域経済を活性化」で解説したように、新築・改修で住宅の断熱性・気密性を高めれば、循環器系疾患に代表される季節変動のある病気・死因を予防できるとともに、医療費・介護費を抑制できることになります。

実際、夏と冬の死亡の差には、住宅性能の違いによる地域差が大きくあります。【図表】では、寒冷地の北海道でその差が小さく、北関東や西日本の太平洋沿岸地域でその差が大きくなっています。比較的温暖な地域の方が、冬の寒さで亡くなる人が多いのです。

これは、医療・介護サービスの消費を、建設分野の投資に代えることを意味します。循環器疾患になった後の治療やリハビリに伴う出費でなく、住宅の断熱性向上に投資し、快適な住環境と循環器系疾患リスクを低下させた生活環境を手に入れることになるからです。

どちらも、経済全体の視点からすれば、消費・投資という意味で同じですが、住民にとっての効用はまったく異なります。暑さ寒さを我慢しながら循環器系疾患の後遺症や再発の不安を抱える生活と、快適な室温で健康リスクの低い生活を送るのとでは、天と地の差があります。まさに、負の効用でなく、正の効用の選択です。

同様に、再エネの普及によって、環境価値が増加します。化石燃料は、必然的に温室効果ガスを排出します。一方、再エネはほとんど温室効果ガスを排出しないため、その分だけ環境に対する価値が高いことになります。環境価値の低いエネルギーを利用することに対し、国・自治体は環境政策を講じて、その社会的な影響を抑制しようとしています。環境政策は税金を原資にしていますので、住民は化石燃料による影響に対して、その価格に直接ではありませんが、税金を通じて対価を支払っているわけです。あるいは、環境の質の低下を甘受するというかたちで、対価を支払っています。再エネの場合、そうした対価を支払わなくて済みますので、その分だけ、環境価値があることになります。

再エネの環境価値は、グリーン電力証書として市場取引されています。観念的な価値でなく、市場で金銭的に評価されている価値です。

地域経済政策の目的は、単に地域の金回りを良くすることでなく、それを通じて住民福祉を向上することにあります。資金循環を高めるだけでなく、その方向を変えて、同じだけの資金循環でより効果的に住民福祉を向上することができれば、目的の達成になります。

これまで自治体は、住民福祉を向上させる地域経済政策という視点を持っていませんでした。これらの分野に民間投資を誘導することは、自治体に求められる経済政策です。

【図表】冬季死亡増加率の都道府県比較(国土交通省「住宅の断熱化と居住者の健康への影響に関する調査の中間報告」

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