top of page

医療費・介護費を減らすと同時に地域経済を活性化

冬に多い死因の冬と夏の落差について、寒冷地の方が大きいと限りません。図表は、北海道と栃木県の主要死因について季節変動を比較したものです。北海道の方が、栃木県よりも寒冷地であるにもかかわらず、季節変動がなだらかです。

これは、それらの死因について、外気温よりも室温が大きく影響することを示しています。民間気象予報会社のウェザーニューズ社の調査によると、朝起きたときの室温が高い地域について、沖縄県に次いだのが北海道の16.3度でした。栃木県は10.7度でした。

それは、国土交通省の調査でも裏付けられています。調査によると「冬季において起床時室温が低いほど、血圧が高くなる傾向」がみられ、「高齢者ほど室温と血圧との関連が強いことが認め」られ、「居間または脱衣所の室温が18度未満の住宅では、入浴事故リスクが高いとされる熱め入浴の確率が有意に高い」ことが、明らかになりました。

冬の室温は、暖房に加えて、住宅の断熱性・気密性で決まってきます。多くの人は就寝時に暖房を切るため、断熱性・気密性が低ければ、朝の室温が大きく低下するからです。国土交通省の調査でも「断熱改修によって室温が上昇し、それに伴い居住者の血圧も低下する傾向が確認」されました。

ということは、新築・改修で住宅の断熱性・気密性を高めれば、循環器系疾患に代表される季節変動のある病気・死因を予防できるとともに、医療費・介護費を抑制できることになります。とりわけ、循環器系疾患は高齢者で顕著な病気であるだけに、高齢者数の増加に伴う医療費・介護費の増加を抑えられると期待できます。

しかも、住宅の断熱性・気密性を高めることは、それだけ建築投資を拡大し、地域経済の活性化に寄与します。建築・建設業は、小さな自治体にもたいてい存在するだけに、地元企業の仕事を増やすことにつなげやすいのです。また、断熱性・気密性の高い住宅は、冷暖房費を削減できる効果もあります。

建築への投資は、医療費・介護費の削減として回収することになります。直接的には、施主家族の疾病リスクの低下と削減した光熱費分というかたちで投資回収できますし、間接的には、医療施設などへの過剰投資の回避や住民の幸福感の増大など、様々なかたちで社会に還元されます。

こうした健康と建築の関係は、日本よりも海外で知られています。例えば、イギリス政府は、賃貸住宅の大家に対し、貸す部屋の室温が低下しないよう、ガイドライン(60頁)で注意を促しています。ガイドラインは、16度以下の室温について「深刻な健康リスクが生じる」、10度以下で「低体温症のリスクが高まる」と警告を発しています。

【図表】北海道(左)と栃木県(右)の主要死因の季節変動(2013年)(北海道及び栃木県の人口動態統計より作成)

特集記事
最新記事
アーカイブ
タグから検索
ソーシャルメディア
  • Facebook Basic Square
  • Twitter Basic Square
  • Google+ Basic Square
bottom of page