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国策が地域の人口減少を加速させている

若者の大都市集中を招いている最大の要因は、大学など高等教育機関の大都市集中です。大学や学部の立地は自由でなく、文部科学省の認可事項であるため、政府の方針によって大都市集中になったといえます。図表の都道府県格差は、国策の結果なのです。

国際的に見れば、大学の大都市集中に必然性はありません。例えば、アメリカを代表する大学の一つ、ハーバード大学は、マサチューセッツ州のケンブリッジという人口10万人の都市にあります。イェール大学のあるコネチカット州のニューヘイブンという都市は、人口13万人です。イギリスを代表するオックスフォード大学のオックスフォードという都市も、人口16万人です。大学の価値と都市の規模は関係ないのです。

2020年のオリンピック・パラリンピック東京大会も、東京への人口集中を招く政府の政策です。政府が2014年12月に閣議決定した「まち・ひと・しごと創生長期ビジョン」は、首都圏への人口流入について「2020年オリンピック・パラリンピック東京大会の開催は、それを増幅させる可能性が高い」と認めています。そして、首都圏への人口流入が「このまま推移すると、過密の東京圏と人が極端に減った地方が併存するような形で人口減少が進行していく可能性が高い」と指摘しています。

オリンピック・パラリンピック東京大会は、公共事業の東京集中も招きます。そのため、建設労働者の首都圏集中を引き起こします。これまで、公共事業は地域の人口を維持する重要な要因と考えられていましたが、首都圏集中の要因に転換しつつあるのです。さらに、労働者の不足や人件費の高騰により、東日本大震災からの復興事業の足を引っ張る点も無視できません。復興の遅れは、被災地からの人口流出を加速させてしまうでしょう。

政府によって主導されている大都市での再開発誘導も、大都市への人口集中を引き起こしている要因です。容積率等を緩和することにより、これまで以上に大規模なオフィスビルやマンションを建てられるようにする政策です。当然、それに伴って新たな企業が立地し、新たな住民が居住します。その住民たちは、どこからか移り住んで来る人々です。この政策の根拠になっているのは「都市再生特別措置法」で、内閣総理大臣を本部長とする都市再生本部が政府に置かれています。

しかも、大都市での再開発誘導を政府で担当しているのは、地域の人口減少対策を担うのと同じ大臣、同じ組織です。いずれも、地方創生担当大臣の所管で、内閣府地方創生推進事務局が担当しています。右手で大都市への人口集中を加速させ、左手で集中を抑制しようとしているのです。

このように、大都市への人口集中の背景には、それを促進する国策があります。矛盾する政策を改めない限り、大都市への人口集中は続くことになるでしょう。

【図表】都道府県別大学収容力(2014年)(長野県「信州創生戦略参考資料」)

   ※大学収容力=都道府県内大学入学者数/都道府県内18歳人口

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